直前の台風予報。どの天気予報を見ても10月23日から続く傘マーク。行程を大幅に変更せざるをえない状況になるだろうと学年スタッフが頭を悩ませた修学旅行でしたが、不安定な天候の中、三泊四日の全行程をなんとかほぼ予定通りに実施することができました。台風接近という危機的状況を考えれば、これは奇跡といってもよいかもしれません。また、風邪による発熱で宿にて休むことを余儀なくされた生徒も数名いましたが、無事に回復し、参加者全員で東京に帰ってくることができました。
〜 初日 〜
東京駅の団体待合い場所にほとんどの生徒が余裕を持って集合してくれました。学校行事で初めての新幹線は、待ちわびた修学旅行への期待からか、楽しげな雰囲気に包まれました。
▲時間通りに東京駅にしっかりと集合してくれました。
▲中間考査終了後のご褒美ともいえる修学旅行!
▲待ちに待った修学旅行!車内は楽しげな雰囲気に包まれます。
京都駅に到着すると、いよいよ京都に来たのだと心が躍っているようでした。その後はバスで奈良の東大寺へと移動。雨が気を遣ってくれているかのように小康状態を保ち、語り部の会の方のお話を聴きながら、クラスごとに見学をしていきます。語り部の会の方は修学旅行生を案内するプロ。南大門では、開口の阿形(あぎょう)像と、口を結んだ吽形(うんぎょう)像の2体が一対となって、この二人の息がぴったり合えば「阿吽(あうん)の呼吸」となるのだという説明や、南大門の木は樹齢800年であり、南側の柱の穴は三好・松永の乱における鉄砲の弾丸の跡であるというエピソードを披露してくれ、生徒たちは真剣に聴き入っていました。奥の大仏殿や二月堂などにおいても、しっかりと話を聴き、混乱した時代を生きる人々のためにと願って建立した聖武天皇の思いの一端を理解しようとしているようでした。教科書に載っている「歴史」がまさに肌で感じられたのではないでしょうか。また、最後は奈良公園の鹿とたわむれる時間もあり、生徒たちは無邪気にはしゃいでいました。
▲南大門の仁王像と鉄砲跡を見つめる生徒たち ▲大仏殿へと足を伸ばします。
▲聖武天皇の願いが込められて制作された大仏 ▲祈りを捧げる生徒たち
▲語り部の会の方の話に聴き入る生徒たち ▲二月堂での記念の一枚
▲奈良公園で鹿と触れあいました! ▲鹿と仲良くなりました!?
その後、バスに揺られ比叡山延暦寺へ。国語の授業で学習したように、平安京の北東、鬼門に建てられた天台宗の総本山。厳しい修行で知られ、法然や慈円をはじめ、歴史に名を残す僧が生まれた寺院です。そうした場所で修行体験ができる生徒諸君は幸運だと私たちは言ってきましたが、夕食から始まった食事作法では生徒たちは面食らったようです。犠牲になってくれた命はもちろんのこと、農家の方が作ってくれた作物、それを運んでくれた方、それを調理してくれた方、それを配膳してくれた方、私たちが食す料理に関わったすべての方々へ感謝していただくというのは、予てより校長先生から教わっていたことでした。しかし、感謝して食べるために、食べることに集中し、「一切話をしない」「一切物音を立てない」という作法は初めてで、驚きを隠せなかったようです。また、最後にたくあんで洗鉢して食事を終了するというのも初めてでした。その後の座禅説明においても厳しいご指導をいただき、心を落ち着けて物事に丁寧に取り組むということが、普段は今一歩できていないことに気づかされたようでした。
▲食事に関わったすべての方に感謝しながらいただきます。▲禅の精神を勉強しました。
▲翌朝の座禅体験に先立って練習します。 ▲禅杖で叩かれる際の作法も理解しました!
〜 二日目 〜
二日目の起床は4時30分。かなり早い時間ではありましたが、生徒たちはしっかりと集合してくれました。幻想的な朝霧の中、座布団を抱えて一同根本中堂へ向かいます。根本中堂は伝教大師最澄が最初に寺を興した総本堂であり、最澄がともした1200年間一度も消えることなく輝き続けている不滅の法灯でも有名な聖地。そうした場所で、座禅体験ができるとは、なんたる幸運!生徒諸君がそう思ったかどうかは定かではありませんが、前日に学んだ座禅の仕方をおさらいし、いざ座禅体験!「調身」(姿勢を整える)、「調息」(呼吸を整える)、「調心」(心を整える)という三つを実践した30分間。目は半眼にし、呼吸に合わせて数を数えて集中していきますが、心が乱れて禅杖で叩かれた生徒も複数名いました。30分が経過した後、住職からお言葉を頂戴しました。「座禅を通して、自分を見つめるのです。その中で、数えていた数が分からなって適当に数え直してみたり、早く終わってほしいと思ったりと、人それぞれだったと思います。そういう自分が今そこに座っているということ。集中力のない自分。いい加減な自分。ただし、それに気づくことで、自分を変えていける。そういうきっかけをもたらすのが座禅止観なのです。この経験を延暦寺のかたちのないお土産だと思ってください。」生徒たちはしっかりと受けとめてくれたようでした。
▲5時10分に皆集合できました! ▲幻想的な朝霧の中、根本中堂へ移動します。
▲座禅体験は自分自身と向き合う貴重な体験でした。 ▲最後の修行?階段上り!
その後の朝食、写経には落ち着いた心持ちで臨んでくれました。写経での集中力は見事で、最後には自分の願いを思い思いに書いてくれました。そして、大講堂で記念撮影をし、東塔巡拝して、名残惜しくも延暦寺での活動は終了。昼食では、最後ということで気が緩んだのか、学んだ食事作法が実践できず、叱られてしまいましたね。そうした中、別れに際して住職からもう一度お言葉をもらいました。「この二日間ずっと言ってきましたが、今何をすべきか考え、そのことに集中してください。話を聴くときは聴く。遊ぶときは思いきり遊ぶ。そうすれば、メリハリのある人生が送れるし、いろいろな物事がうまく回っていくはずです。短い間でしたが、延暦寺での経験をみなさんの今後の人生に活かしていってください。」生徒たちにとっては厳しい指導ではありましたが、そこに温かみがある素晴らしいお人柄の住職から学んだことは多かったのではないでしょうか。
▲写経に真剣に取り組む生徒たち ▲静寂があたりを包みます。
▲願い・目標は校訓である「行学二道」の実践 ▲「自分に厳しくする」という決意を書きました!
▲大講堂前でポーズを揃えて記念撮影! ▲阿弥陀堂の前で静かにジャンプ!
▲皆で東塔を参拝しました! ▲住職からの最後のお言葉も胸に染みました。
琵琶湖を見下ろしながら比叡山を下り、京都中心街を通り亀岡へ。前日とこの日の雨で、まず無理だろうと思われた「保津川下り」でしたが、なんとか乗船可能という判断が下りました!レインコートを着ながらという状況でしたが、後半は次第に雨も止み、トロッコや小倉山、珍しいかたちの岩など、船頭さんの話を聴きつつ美しい景観を楽しみながら川下りができました。急流ポイントでは「おぉ〜」いう声もあがり、生徒たちは大いに盛り上がっていました。
▲小降りの雨で奇跡的に乗船できました! ▲美しい景観を楽しみながら川下りができました!
▲舟を漕ぐ体験もさせてもらいました! ▲船頭さんの計らいで記念に残る一枚が撮れました!
下船後は、いよいよ京都中心街のホテルである加茂川館へと移動。そこで待っていたのは豪華な夕食でした!精進料理が続いていた中でのすきやきに生徒たちは気分が高揚していました。
▲豪華な料理に大盛り上がり! ▲皆でいただく食事は格別です。
〜 三日目 〜
いよいよタクシー班別研修。自由に見学して廻れるこの日を生徒たちは最も楽しみにしていたようです。しかし、朝から雨が強く打ち付けるあいにくの天候。思うように巡ることができないかもしれないと懸念されましたが、午後には雨脚も弱まり、班ごとに決めた行程を十分に楽しめたと聞いて私たちも安心しました。金閣寺や龍安寺をはじめ、八坂神社、飲食店、新京極商店街など至る所で生徒たちに出会いましたが、タクシーの運転手さんの話を聞きながら、楽しそうに巡っていた姿が印象的でした。
▲金閣寺をバックに記念撮影! ▲世界遺産記念の石碑の前で!
▲こちらも世界遺産!龍安寺にて ▲龍安寺の石庭前という素晴らしいロケーションで
▲生徒たちは楽しみながら京都を巡れたようです。 ▲湯葉のおいしいお店で会いました!
▲今度は抹茶のおいしいお店で出会いました! ▲新京極商店街にて運転手さんと共に!
▲八坂神社で運転手さんを囲んで! ▲雨の中ではありましたが楽しめました!
▲全員無事に帰ってきてくれました! ▲十分楽しめたということで何よりです!
〜 四日目 〜
とうとう最終日。起床し、すぐに着替え、荷物を整理し、部屋の清掃をこなす生徒たちの姿はさすが中学三年生だなと感じました。
バスで清水坂まで移動し、清水焼下絵付け体験です。事前に考えた下書きをもとに、マグカップの絵柄を描いていきます。楽しげな雰囲気の中、思い出に残るであろうマグカップの絵付けに精を出していました。完成したものが手元に届くのが待ち遠しいですね。
▲真剣にマグカップの絵付けに取り組む生徒たち ▲マグカップの完成が待ち遠しいですね!
その後、清水寺へ移動し、山門前で写真撮影。清水の舞台からは班ごとに見学し、心静かに拝観する生徒、縁結びで有名な地主神社でお祈りをする生徒、お土産屋巡りを楽しむ生徒、思い思いに自由時間を楽しんでいました。
▲ガイドさんとの記念写真に喜ぶ生徒たち ▲清水寺山門前では各クラス記念撮影を!
▲清水寺舞台からは自由行動でした。 ▲おみくじを引くなど思い思いに楽しみました!
▲地主神社で小槌を振り祈る! ▲お土産屋巡りも楽しみました!
▲三日間で京都を満喫しました! ▲ご家族へのお土産もばっちり購入!
修学旅行最後となる昼食では、全員で京料理に舌鼓を打ち、バスで京都駅へと向かいました。添乗員さんと運転手さんに別れの挨拶をし、新幹線へ。途中駅である京都駅では停車時間が短いのですが、皆の迅速な動きのおかげで無事全員乗車できました。そして、最後の最後まで修学旅行を満喫しようという意識が働いたのか、帰りの新幹線でも賑やかで、生徒諸君のエネルギーすごさを感じました。しかし、愉快に過ごす中でも、一般のお客様への配慮やマナーも忘れなかった点は大変素晴らしかったと思います。
▲最後昼食を楽しみます! ▲あまりにも美味しいかったので食べ過ぎました!
折悪しく、台風の影響でどうなることかと思われた修学旅行でしたが、無事に参加者全員で東京に帰ってくることができました。手からこぼれ落ちそうなほどのお土産と、お土産話を生徒たちはすでにご家庭で披露してくれたかと思います。修学旅行で学んだ精神と思い出を胸に、中3生徒諸君の活躍を今後も楽しみにしています。お疲れさまでした!