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2011/06/20

学校長メッセージ 『校報』(6月18日発刊)より転載

「東日本大震災に思うこと」

 現在日本では東日本大震災による未曾有の事態に直面しています。被災地では亡くなられた方や、いまだに安否の分からない方が大勢いらっしゃいます。また、無事に避難された方も、大地震が発生してから2ヶ月が経った今でも避難所で不自由な生活を余儀なくされ、大きな不安を抱えています。

 ここに、お亡くなりになった方々のご冥福をお祈りするとともに、被災者の方々にも心よりお見舞い申し上げます。

 幸い東京では地震そのものによる大きな被害はありませんでしたが、原子力発電所の事故による電力の不足や放射能漏れに伴う汚染や風評被害、あるいは政治や経済の混乱などで先の見えない不安から、ともすれば笑顔すら憚られるような日常を過ごしているかもしれません。けれどもこのような状況の中、日本国内はもとより世界中から支援の輪が広がり、被災地には多くの援助と応援が送られてきています。私たち佼成学園関係者も日本国民の一人として支援する心を忘れてはならないと思います。

 佼成学園の建学の精神は、「心身一如の円満な人格を養成し、平和社会の繁栄に役立つ人間の育成する 」です。また、「この世に生を受け恵まれた生活の中で、希望の活動をさせていただけることに、神仏、両親をはじめ多くの方々に感謝し、人に対する思いやりや親切心の行動ができる若者を育成する」と教育方針には謳っています。私たちは日本がこのような困難な状況だからこそ、佼成学園の建学の精神と教育方針を今一度自覚して活動することが必要なのではないでしょうか。犠牲になられた方々や避難されている方々に想いを馳せ、今まで不自由なく過ごせていたことに感謝をすること、そして被災者のために自分たちにできることは何かをよく考え、小さな協力でも構わないのでまず行動を起こし、この困難に立ち向かっていくことが求められます。このような活動を続けていくことは、結果として多くの生徒を思いやりや親切心を持った若者に成長させることでしょう。実際に、生徒会では地震発生後まもなく自主的に募金活動を行い、日本赤十字を通じて被災地に義援金を送りました。こうした姿を見ても建学の精神が見事に実践されているようで頼もしく思います。

 また理事長講話、校長訓辞、集会など様々な機会を通じて、震災に関するエピソードを具体的に生徒に語りかけ、そのことの意味を考えさせるようにしています。たとえば被災された方々が気丈に協力しながら老人や子供たちを優先している思いやりの話や、被災された小さな子供たちが自分たちができる協力を行っている話、復興支援のボランティアの方々の現地での立派な活動の話などです。生徒たちが息を呑みながら聴き入り、真剣な表情を傾ける様子を見ると、被災された方々への思いやりを持ち続け、今後は被災地の復興支援の輪の中で活躍する若者になっていく姿が予感されます。

 私は昨年度の校報に「生徒全員に幸せになって欲しい」と書きました。幸せとは「多くの人に心から感謝されるような人間であること」だと思っているからです。また一昨年度は「人は他人を幸せにすることでしか幸せにはなれない」とも書きました。つまり幸せになるということは、「自分自身が感謝の心を持ち続け、困っている人、苦しんでいる人に大きな思いやりの心をもって手を差し伸べることの出来る、勇気と行動力のある人間になること」なのです。そのためにも、我々教職員をはじめとした大人が模範となる行動を生徒たちに見せていくことが必要です。我々大人自身が小さなことから支援の行動を起こし、その背中を生徒たちに見せながら共に日本を再建するための努力をしていくことが、何よりも大切なことだと思います。

 東日本大震災の残した爪痕はあまりにも痛ましく悲惨です。おそらく今後の復興への道のりも長く険しいものかもしれません。けれども日本人の団結の力と思いやりの心を信じて、日本復興のため子供も大人も心を一つにしようではありませんか。日本の未来を信じ、どんな時でも「頑張れ日本」という思いを持っていたいと切に思っています。


                    佼成学園中学高等学校長 榎 並  紳 吉